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『水燃えて火~山師と女優の電力革命 』を読んで想いを馳せる、信州木曽谷の歴史

『水燃えて火~山師と女優の電力革命 』神津 カンナ (著)

福沢諭吉の女婿で山師とも呼ばれた福沢桃介と、日本初の女優として欧米でも人気を博した川上貞奴。ふたりの異端の交わりがやがて水力発電の時代を開く近代史の断面を、伊藤博文・後藤新平ら要人たちの人間模様、また、島崎広助・春樹(藤村)兄弟の葛藤などを織り込みながらダイナミックに描く。著者新境地の長編小説。


信州、木曽。

その地は、木曽谷と呼ばれるV字谷を一級河川、木曽川が蛇行しているような地形で、古くは征東大将軍・木曽義仲を、近代においては大俳優・田中要次などの大物を輩出した土地である。

 

この小説は事業家・福沢桃介(福沢諭吉の娘婿)が、当時欧米で名を馳せた日本第一号女優、川上貞奴に支えながら、様々な難局を乗り越えて、その信州木曽の地に水力発電所を建造していく史実ベースの物語。

 

木曽の民ならば、ぜひ読んでおきたい。

なにしろ文章の30%くらいは、戦国の豊臣時代から続く木曽の歴史がこと細かに描写されており、誰も教えてくれなかった歴史がそこにあるからだ。

 

「え、そうだったの!」ってなる。

「なるほど。だからか・・」と合点がいくこともあるはず。

 

自分のバックボーンを知る上でも、ぜひおすすめしたい。

 

さて、木曽の歴史はさておき、

「蚯蚓(ミミズ)も雲を得れば竜となる。登天の策を講ずるには、まず雲雨のある時を択ばねばならぬ。故に平成の時代に於いては、投資として株を買うのは可なれども、投機として株を買うは断じて不可である。投資を試みんと欲するものは、まさにこの変化の起こる時を見すまして一躍その機に乗ぜなければならぬ」

これは桃介の自著にある言葉。

 

副題にある「山師」はリスクテイカー、または詐欺師のような意味合い。

いまでこそ、一般の人々が株式相場で一喜一憂する時代だが、当時は相場師と言えばそういうグレーな人種にカテゴライズされていたそうな。そのことを岳父である諭吉先生もよく思っておらず、人生の半ばまで彼の足を引っ張ることになる。

 

いまでこそ一般の人が株式相場や仮想通貨市場で一喜一憂しているが、明治大正はかなりイメージ悪かった様子。不労所得に対する嫉妬ややっかみもありそうだ。

 

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須原発電所 

 

実業家としての桃介の生き様はもちろん、島崎家当主の島崎広助(作家・島崎藤村の実兄)など、魅力的な人物が登場するが、中でも強く魅力を感じたのは、川上貞奴だ。

壮絶な生き様である。

「日本の近代女優第一号」

日舞の技芸に秀で、才色兼備の誉れが高かった貞奴は、時の総理伊藤博文や西園寺公望など名立たる元勲から贔屓にされ、名実共に日本一の芸妓となった。

1894年、自由民権運動の活動家で書生芝居をしていた川上音二郎と結婚した。

1898年に2人は築地河岸よりボートに乗り、国外への脱出を図るという挙に出たこともある。この試みは失敗し、淡路島に漂着して一命を取り留めた。

1899年、川上音二郎一座のアメリカ巡演に同行。

1900年、音二郎一座はロンドンで興行を行った後、その同年にパリで行われていた万国博覧会に招かれ、会場の一角にあったロイ・フラー劇場において公演。

貞奴の影響で、キモノ風の「ヤッコドレス」が流行。ドビュッシーやジッド、ピカソは彼女の演技を絶賛し、フランス政府はオフィシェ・ダ・アカデミー勲章を授与した。

川上貞奴 - Wikipedia

なんと1900年にパリ博で公演している。

いまから百年も前の日本に、こんなにグローバルな活躍をした女性がいたことをもっと知ってほしいと思った。

 

そういった類まれな才を持つ人々に愛され、土地のポテンシャルを見出された信州木曽は景観も美しく、山の幸も大変おいしいところ。

 

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桃介橋(南木曽)

 

というわけで、この本を読んだらぜひお越しください。

 

南木曽駅から桃介橋を渡ったところに福沢桃介の記念館もあります。

 福沢桃介記念館 

 

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私の実家から(南木曽)

 

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木曽の五平餅

 

先日、当社のベトナムスタッフが遊びに来て、焼きたての五平餅をうまいうまい言ってたくさん食べて帰った。米文化圏にグローバルに通用するこの美味さ、とくとご賞味くだされ。

 

ではまた。